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脳梗塞脳梗塞

まず、脳梗塞は、脳の血管が何らかの原因で閉塞して、脳に栄養が送られなくなり、脳の細胞の一部が壊死してしまう病気です。

原因により

  1. アテローム血栓性脳梗塞
  2. 心原性脳塞栓症
  3. ラクナ梗塞

の3つに大きく分類されます。それぞれの発症様式、症状、治療などをお話しします。

①アテローム血栓性脳梗塞


日本医師会雑誌 第142巻 特別号(2)
S146より引用

アテローム血栓性脳梗塞は、頭蓋内、外の主幹動脈のアテローム血栓が原因であり、日本でも、高血圧症、糖尿病、脂質異常症などの危険因子の増加とともに増えています。

アテローム血栓から脳梗塞になるメカニズムは
3通りあり、

1つはアテロームにより高度狭窄を認めているところに、血流が低下し、脳梗塞を起こす場合であり、

1つはアテロームが破綻し、血栓が遊離しその末梢の血管が閉塞する場合であり、(動脈原性塞栓)

もう1つは、アテロームが破綻したのち血栓形成が進み、アテロームの部位の血管自体が閉塞してしまう場合になります。症状は一時的に神経症状(半身麻痺、言語障害、視力、視野障害)などが出て改善する場合や、神経症状出現後段階的に症状が悪化する場合があります。

診断はMRIだけでなく、MRA(頭蓋内、頚部)まで行う必要があります。治療は、血栓溶解薬(組織プラスミノーゲンアクチベーターt-PA、抗トロンビン剤)や脳保護剤(エダラボン)などを使い、内服はスタチン(高脂血症の薬、動脈硬化を抑制)や抗血小板剤(少量アスピリン、シロスタゾール、クロピドグレル)などにて加療し、必要に応じて頸動脈ステント留置術(CAS)や頸動脈内膜剥離術(CEA)などの手術を要する場合があります。


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②心原性脳塞栓症

心原性脳塞栓症は、心臓内でできた血栓が、頭蓋内外の太い血管を閉塞し、突然障害や重度半身麻痺、四肢麻痺、言語障害などで発症する最重症の脳梗塞です。

心臓内に血栓ができる疾患としては、約70%が心房細動や発作性心房細動で左房内血栓が多く、心筋梗塞後や拡張型心筋症で左室内に血栓ができたり、人工心臓弁や原発性心臓腫瘍(粘液腫など)が原因となる場合もあります。
また、心臓内に血栓がなくても、深部静脈血栓症により、心臓の卵円孔などが開存していて、左室と右室がつながっている場合や肺動静脈奇形がある場合は心原性塞栓症を起こす可能性があります(奇異性脳塞栓症)。

症状は、非常に重度で脳ヘルニアにより致命的になる場合もあり、救命できても重度の後遺症(半身麻痺、言語障害、嚥下障害など)が残り、寝たきりになる場合も多いです。発症後約半数は1年以内に死亡というデータもあります。

診断はMRI、MRAで行われ、治療は発症から4.5時間以内であれば、状況に応じて血栓溶解剤(組織プラスミノーゲンアクチベーターt-PA)静注の適応になり、血栓が解けない場合は、血管内手術(血栓回収療法)の適応になる場合もあります。脳梗塞後に脳浮腫や出血性脳梗塞になり脳ヘルニアを起こした場合は命を救うために開頭減圧術を行う場合もあります。脳塞栓症の再発予防のためには、抗凝固療法を行います。ヘパリン静注や抗凝固剤(ワーファリン、直接トロンビン阻害剤ダビガトラン、直接Xa阻害剤リバロキサバン、アピキサバン)の内服が必要です。

左の症例は、突然の左半身麻痺で発症。右中大脳動脈閉塞にて、発症3時間以内でtPAによる血栓溶解術行うも、脳梗塞は進行し、脳浮腫著明にて切迫脳ヘルニアをきたしている状態。
開頭外内減圧術を施行し、救命できたが、重度右片麻痺残存している。

以下の症例は、突然の言語障害(失語)、右半身麻痺にて発症し、右内頚動脈閉塞症の診断にて、発症3時間以内であったため、血栓溶解術+血栓回収術を施行し、著効した一例です。麻痺は改善し、軽度失語症残存もADL自立となり、独歩で退院した。

血栓溶解術+血栓回収術前
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血栓溶解術+血栓回収術後
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③ラクナ梗塞

ラクナ梗塞は、頭蓋内の主幹動脈からの枝(穿通枝)が動脈硬化により閉塞するためにおきる脳梗塞です。比較的神経症状は軽度の場合が多いが、中大脳動脈からのレンズ核線条体動脈や脳幹を栄養する穿通枝(橋傍正中動脈)が閉塞した場合は症状も段階的に進行し重度の半身麻痺や言語障害が残る場合もあります。これをBAD(branch atheromatous disease)と呼びます。MRI,MRAで診断可能です。

治療は血栓溶解薬(抗トロンビン剤=アルガトロバン)、脳保護剤(エダラボン)の静注と抗血小板剤(少量アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾール)などの内服です。手術になることはありません。

以下の症例は、右上下肢の軽度脱力にて発症した症例です。約2週間の入院加療で独歩退院しております。


また、①~③以外では、頭蓋内外の主幹動脈の解離やもやもや病、抗リン脂質抗体症候群、膠原病(SLEなど)が原因で脳梗塞を起こす場合もあります。

ここまでのお話で、脳梗塞がいかに怖い病気かがおわかりになると思います。『どうせ死ぬなら癌がいい、死ぬまでに身辺整理ができるから。』とか、『心筋梗塞でコロッと逝くのがいい。』とかいう話を耳にすることはありますが、『脳梗塞になって寝たきりになって死ぬのがいい。』という話は聞いたことがありません。

それでは、脳梗塞にならないためにどうしたらいいでしょう。
まずは、メタボリック症候群、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、不整脈(心房細動など)の予防と治療、禁煙です。

もし、上記の生活習慣病にすでにかかっている人は定期的血液検査はもちろんのこと、頸動脈エコー、頭部MRI,MRA,頸部MRAなどを行い、血管の狭窄がないかどうか調べたほうがいいでしょう。

また、心原性脳塞栓症を起こす可能性の高い心房細動や発作性心房細動がないかを調べるには、一度心エコ-(弁膜症の有無をチェック)やホルター心電図などをやっておいたほうがいいでしょう。
特に動悸を感じたことがある方は一度精査したほうがいいと思います。
脳ドックで、頭蓋内の動脈に全く問題なしと診断されても、検診の心電図で異常がなくても、発作性心房細動を起こし、心原性脳塞栓症を起こす可能性はあるので注意した方がいいでしょう。

また、心房細動は脳だけでなく、手や足の動脈に血栓がとんだり(急性動脈閉塞症)、腹部の動脈に飛んだりすること(急性上腸間膜動脈閉塞症など)もあり注意が必要です。

また、脳の動脈や頚部の動脈に狭窄がある場合は、心臓の動脈、大動脈、腎動脈、上下肢の動脈など、全身の動脈に狭窄の可能性があるため、MRAなどによる検査をお勧めします。

当院の役割当院の役割

当院の役割としては、脳梗塞の予防と退院後の外来での再発予防です。

脳梗塞の原因となる、生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症)や不整脈(心房細動)の早期発見と早期治療を行うことにより、脳梗塞を予防することです。MRI、MRAや血液検査、尿検査、心電図、超音波検査(エコー)などを駆使して、No梗塞を目指して予防に全力で取り組みます。

脳梗塞急性期は、急性期治療が可能な病院(石岡循環器科脳神経外科病院、土浦協同病院など)を直ちに受診していただいたほうがいいでしょう。特に、突然神経症状が出現して、倒れたような場合には救急車をすぐ呼んで下さい。

医院概要 医院概要

医院名 おおくぼ脳脊椎クリニック
診療科目 脳神経外科・内科
住所 茨城県土浦市並木5-4079-1
電話番号 029-832-8732
診療時間 日祝
09:00~12:00 - -
15:00~18:30 - -
[休診日] 木曜日・日曜日・祝日
常磐道の土浦北インターを土浦方面に下りてすぐ(車で約1分)
◆土浦駅からお越しの方へ

常磐線土浦駅からタクシーで約10分です。

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